バーのない陸上競技のように・・・
by 中村 仁 / 2017.08.22
■ある時期、英単語も文法も理解できるのに、日本語を英語にしろと言われて、
最初の一文を書き始められないような、もどかしい気持ちになってました。
昔、コンサルティングを深く追求していた際に、考えていたことを書いてみます。
どうまとまるのか?
それとも、ひっちゃかめっちゃかになるのか?
どちらにしても私らしいとは思いますが・・・
■茂木健一郎さんの『最高の結果を引き出す質問力 その問い方が、脳を変える!』を読んでいて興味深い記述を見つけました。
手元に本がなく、詳細を忘れてしまったのでざっくりと書きます。
フェルマーの最終定理は、「証明」したアンドリュー・ワイルズよりも「問題提起」をしたフェルマーの方が評価されている。
■まぁ、こんな記述でした。
専門学会は知りませんけど、我々素人にとってもフェルマーの方が有名なので、評価が高いと考えることもできます。
「解決策よりも、問いを立てられる方がすごい・・・」
むむっ!!!
■これから伝えることは、「そんなバカな」と笑い飛ばしてもらってほしいんです。
「お前に言われるもまでもないわ」と、思ってもらえると嬉しいですね。
しかし、どうしても伝えたいと思いました。
■いつだって核心は目の前にあるのに、みんな空を見上げて正解のようなものを探し、雲を使むようなことをしているから。
あるとき、私はクライアントの悩みをまとめていて、一件一件に対して答えを探していました。
「どう答えれば、クライアントに動いてもらえるだろうか?」
でも、この質問への答えを探求をしているとき、突然、頭に「ビビビー」と警報が鳴り響いたのです。
■「ああー、なんだなんだ」
偏頭痛か何かかと思ったのですが、違いました。
「集中力が切れてしまった。今日はやめよう。それにしても、あの警報音はいったいなんだったのか?」
幸い、すぐに体調は回復し、ふと、我に返って目の前に散らばっているクライアントの悩みに答えるための本、
素材等を見返していて、警報の正体に気がついたのです。
「ああー、私もゆでがえるか」
ちなみに、あなたはゆでがえるの話はご存知でしょうか?
■熱湯に飛び込んだゆでがえるはすぐに飛び出すけど、冷水からゆっくりと暖められると、熱さに気づかず死んでしまう話です。
世の中は変化しているのに、自分だけが変化に気づいていない、変化に自覚がなければ、手遅れになってしまいます。
■「言われていることがさっぱりわからない」
私は日々、コンサルティングをする中で、多くの人と出会い、彼らの悩みを聞く立場にあります。
彼らの悩みはある意味共通していて、「また、あの話でしょ?」と心の中で予想できるほどぴたっと当てることができました。
■しかし、私には彼らが何を相談内容として、持って来るかはわかっても、
今考えると、悩みらしきものに対する解決策を提示して、お茶を濁していたのかもしれません。
次第に私の口から、不安が言葉となって出てきました。
「クライアントの本当の悩みがわからない・・・私は本当にクライアントの助けになっているのだろうか?」と。
■「彼らが求めているもの(知識)提供すれば、本当に問題は解決するのだろうか?」
バーのない陸上競技のように、手応えがない状態が続いていました。
そもそも、専門知識を求められているのに、答えないのは、
それはよくわかります。
私もこの5年で2,000回ものコンサルティングを行う中で、ある程度のマーケティング上の悩みについては答えられる自負があります。
■でも、時代の流れはとても早い。
常に事例を蓄積しておかなえれば何もわからなくなってしまいます。
自宅にかえってから、クライアントからの宿題である悩みをまとめていました。
「どう答えれば、クライアントに動いてもらえるだろうか?」
■私は彼らの悩みにどう答えれば、相手は動いてくれるだろうか?という問いを立てて、調べていたのです。
その際に、警報が鳴り響いたのは、さきほどお伝えした通りです。
「私もゆでがえるだったのか」
■そのとき、私は大きな勘違いをしていたことに気がついたのです。
クライアントが語る問題はよくわかります。
これまでの知識でも十分な回答を出すことができることもわかりました。
■しかし、なんとなーくしっくりこないものを感じていました。
そして、気づいたのです。
「本当に必要なものは答えなのか?いやっ、本当は最初の段階で問いが間違っているのかもしれない。
正しい問いを立てることができれば、サポートするだけで、クライアントは本当の悩みを吐露し、
そして、自分で納得の答えを導き出して問題は勝手に氷解するのではないか?
答えを大上段から答え当てはめることは、コンサルタントがクライアントのことを信頼していないからなのでは?」
と。
■今、私がコンサルティングを行う上で、もっとも重視しているポイントが「真の課題を発見する」という項目です。
多くの人が抱える問題は、表面的な問題にすぎず、本人ですら相談に来た際には真の課題に気がついていません。
ここを一緒に明らかにするだけで、クライアントの見える世界は変わってくるのではないか?
■教えないコンサルティングの神髄も、教える前に「真の課題」を発見することにあります。
真の課題を発見するための問いを立てることができれば、クライアントは優秀だから、コンサルタントが補助することで、自分でなんとかできるんですよ。
■「クライアントがどうやったら動くのか?」と、あなたは常に考えコンサルティングに取り組んでいるのかもしれません。
もしかして、問いの立て方が間違っているとしたらどうでしょうか?
「クライアントがどうやったら動くのか?」
■ではなく、
「自身がどう振る舞えば、クライアントが真の課題を発見し、動きたくなるのだろうか?」
と考えると、状況は全く変わります。
思考が変われば、行動が変わり、行動が変われば結果が変わります。
■あなたはどう振る舞うことが、コンサルタントのあり方として正しいと思いますか?
きっと答えは無数にあると思います。
あなたが信じている振る舞いはどういうものでしょう?
クライアントはあなたを見ています。
あなたを見て信頼し、
■本音が出れば、問題の半分は解決したようなものです。
どんな問いを立てればよいのか?
コンラット東京のラウンジでコーヒーを飲みながら、茂木健一郎さんの本の内容が心にしみ込んで来るのを実感していました。